災害が起きた際に、避難生活を自宅で送る「在宅避難」。実は国も、条件付きで在宅避難を推奨していることをご存知ですか。
今回は、災害時にぜひ知っておきたい在宅避難について解説。在宅避難のメリット・デメリット、在宅避難を判断する際のポイントほか、在宅避難の際に必要なもの・あると便利なもの、備蓄品の置き場所などをご紹介します。
在宅避難とは
在宅避難とは災害の発生時、自宅や周囲の危険性がない場合に「避難所ではなく、自宅にとどまる避難する方法」です。
災害発生時、在宅避難をするケースは多くあります。
例えば、東日本大震災で被災した宮城県石巻市では、発生からおよそ3週間後、避難所避難者のおよそ2倍にあたる約6.1万人が在宅避難しています。(※)
なお、在宅避難にはメリットとデメリットの両面があるため、しっかり理解しておきましょう。
※「災害時の「住まい確保」等に関する行政評価・監視-被災者の生活再建支援の視点から-結果報告書」総務省
在宅避難のメリット
在宅避難には、以下のようなメリットがあります。
● 住み慣れた場所で生活が続けられる
● プライバシーが確保でき、安心感がある
● 避難所における共同生活のルール(消灯時間・食事時間など)がない
● ペットと生活できる
● 集団生活による感染症リスクが軽減できる など
在宅避難ではプライベートな環境で生活が継続できる点が、大きなメリットです。
また、避難所でインフルエンザや新型コロナウイルスなどが流行した場合、在宅避難であれば感染リスクの軽減が期待できます。
在宅避難のデメリット
在宅避難には多くのメリットがある 一方、以下のようなデメリットもあります。
● 最新の災害・救助・支援などの情報取得が難しい場合がある
● 他者との交流が減るケースがある
● 相談相手・見守り相手がいないケースがある など
上記のようなデメリットに対しては「隣近所の在宅避難者どうしで、情報交換や交流をする」「定期的に避難所に足を運ぶ」などの対策が考えられます。
在宅避難を判断するポイント
在宅避難は、国が推奨する避難方法です。
「災害時の「住まい確保」等に関する行政評価・監視-被災者の生活再建支援の視点から-結果報告書」(総務省)では「在宅避難を原則とする」という旨の内容が記載されています。
ただし、在宅避難を判断するには、以下の2点をチェックしなければなりません。
● 自宅や周囲の危険性
● 自宅で生活できるか
ここからは、上記のポイントについて詳しく解説します。
なお、在宅避難を判断するフローチャートは、各自治体からも出ていますので、お住まい地域の自治体のフローチャートもご確認ください。
自宅や周囲の危険性
自宅や周囲に被害がない、もしくは軽微な被害であれば在宅避難を検討します。
一方、以下に当てはまる場合は、 在宅避難が困難な可能性があります。
● 自宅に倒壊の被害がある/倒壊の可能性がある
● 自宅に周囲の建物の火災・倒壊などの影響がある
● 自宅に土砂災害・水害の影響が及び、生活が難しい など
なお、在宅避難するか避難所へ行くか迷った場合は、お住まい地域の災害リスクから判断する方法があります。
具体的には、ハザードマップポータルサイト(国土交通省)や自治体が発表するハザードマップなどをチェックしてください。
お住まい地域が「土砂災害警戒区域」「洪水」などに該当する場合は、移動が可能なうちに、避難所へ向かいましょう。
自宅で生活ができるか
自宅や周囲に危険がなく、 さらに以下に該当する場合は在宅避難が検討できます。
● 本人・同居人が無事である
● 食料・携帯用トイレ・カセットコンロなどライフラインの備蓄がある
● ケガ・持病・障がい・介護・高齢などの理由による、周囲からのサポートが必要ない
なお、在宅避難する方も、避難所のトイレの利用や食料の受給などは可能です。
在宅避難をする際に必要なもの
在宅避難をする際は最低3日分、可能であれば1週間分程度の備蓄が必要となります。
以下、3日分の備蓄の例です。
必要なもの | 備蓄の目安 |
食料品 | レトルト食品・缶詰・乾パン・即席麺など |
飲料水 | 1日3L(3日で9L) × 人数分 |
燃料 | カセットコンロ カセットコンロ用ボンベ × 6本以上 |
生活用品 | 救急箱、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ビニール袋、ウエットティッシュ、災害用トイレ、使い捨てカイロ、懐中電灯、モバイルバッテリー など |
その他必需品 | 乳幼児用のミルクやおむつ、高齢者の薬、女性の生理用品、ペットフードなど |
食料品・飲料水・生活用品はもちろん、燃料(カセットコンロ + ボンベ)も忘れずに用意します。
東日本大震災において、復旧に最も時間のかかったライフラインがガスだったためです。
燃料を用意することで、 非常時でも温かい飲食物を口にすることができます。
在宅避難をする際にあると便利なもの
在宅避難に際しては、以下のようなものがあると便利です。
あると便利なもの | 備考 |
水が不要な衛生用品 | 水やお風呂がなくても清潔さをキープできる。 |
ランタンライト (電池式) | 部屋全体を明るく照らすことができる。 |
ポータブル電源 | 停電時に小型の冷蔵庫やポット・電気毛布・扇風機などが使えたり、電子機器の充電ができる。 |
水が不要な衛生用品があれば、シャワーやお風呂が使用できなくても、体の清潔さが保てます。
具体的には、歯磨きシート・除菌シート・ボディシート・ドライシャンプーなどが挙げられます。
ランタンライトがあれば、部屋全体を明るく照らせるため、LEDで電池式の製品を用意します。
交換用電池も常備しておくと安心です。
ポータブル電源は、電気が復旧していない状況でも、一部の家電が使用可能となります。また、スマートフォン・パソコン・ラジオなどの充電も可能です。
ポータブル電源は災害時のみならず、キャンプなどのアウトドアにも普段使いできます。
在宅避難のための備蓄品はどこに置くべき?
在宅避難のための備蓄品は、玄関・キッチン・リビング・寝室など、数か所に分散させて置いておくことが望ましいでしょう。
備蓄品を1箇所で保管すると、被災によって潰れたり、取り出せなくなる可能性があるためです。
ローリングストック法も活用
在宅避難のための備蓄をする際は、ローリングストック法も役立ちます。
ローリングストック法は、日頃使う生活必需品・食料品などを余分に購入し、消費した分を補充する方法です。
ローリングストック法を活用することで、一定の備蓄を無理なく行えます。
日頃、生活必需品・食料品を保管する場所がそのまま使え、 改めて備蓄場所を作る必要がない点もメリットです。
まとめ
在宅避難は、災害発生時に避難所へ避難せず、自宅で生活を継続する避難方法です。
住み慣れた場所でプライバシーを確保して生活でき、 ペットと暮らし続けられる点もメリットとなります。
ただし、自宅や周囲に危険がある場合や、持病や障害があるなど自宅での生活が困難な場合は、避難所へ移動した方が良いでしょう。
なお、在宅避難するためには食料や生活必需品などの備蓄を、日頃からしておくことが必要です。
普段消費する生活必需品・食料品を余分に購入し、常にある程度のストックを作っておく「ローリングストック法」なども活用して、日頃からの備蓄を心がけてください。