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公益社団法人日本包装技術協会の月刊機関誌『包装技術』(2021年9月号)に弊社代表・平井雅也論文「特集●備蓄・ローリングストックと包装:25年保存可能のおいしい備蓄食 サバイバルフーズ」が掲載されました。

公益社団法人日本包装技術協会の月刊機関誌『包装技術』(2021年9月号)[特集●備蓄・ローリングストックと包装]
25年保存可能のおいしい備蓄食 サバイバル®フーズ/(株)セイエンタプライズ 平井雅也


包装技術(2021年9月号)

25年保存可能のおいしい備蓄食 サバイバル®フーズ


Survival®Foods – Delicious Foods Having 25 Years Shelf Life
by M.Hirai., JPI Journal Vol.59 No.9, 578-581, 2021-09
Sei Enterprise, Inc. was founded by Susumu Hirai in 1978. The company has been creating and making the market for long-term storage foods in Japan. Susumu got inspired by an idea when he started his business of the data archiver. He thought that the data archiver that could store data for more than 50 years should also consider providing his staff with long-term storage foods. He researched food storage techniques and met with a canned freeze-dried foods in the USA. Then, a normal shelf life of emergency foods was less than a year in Japan. Susumu found its 25 years shelf life remarkable.
The Survival Foods has been promoted under the concept that “The food crisis could occur at any time in the future, so what we need is not the emergency foods but the storage foods “( Bichiku-Shoku” in Japanese)”. The Survival Foods was originally imported from the United States. But now we are manufacturing them and doing all process in Japan because we believe Bichiku-food storage should be completed domestically. The Survival Foods is recognized as delicious super long-term storage foods for any disasters in the market.


特集●備蓄・ローリングストックと包装:25年保存可能のおいしい備蓄食 サバイバルフーズ
特集●備蓄・ローリングストックと包装:25年保存可能のおいしい備蓄食 サバイバルフーズ

はじめに

日本における長期保存食市場の歴史はそのまま当社の歴史でもある。当社が創業した1978年当時は非常食といえば乾パンであり,その保存期間は1年であった。この頃,企業や自治体から預かるデータをマイクロフィルムにして50年間保管する情報倉庫(アーカイバサービス)事業の起ち上げに携わっていた平井進(現会長)は,データを50年保管するならば,データを管理する技術者の食事も50年保管する必要があると考えた。そこで長期の保存が可能な食料加工技術をリサーチし,米国でフリーズドライに至った。



1.販売の経緯と備蓄の思想

1970年代当時は,賞味期限という期限表示制度がなく,非常食の保管については,保管期間や保存期間(保存期限)として備品(雑貨)と同様に管理されていた。当時の常識では食品の保存は長くて1年くらいであり,25年の保存が可能なサバイバルフーズは,異質であった。
開明的なユーザーに支えられながら,経年でも変質が抑えられているというデータを丹念に示すことにより,より多くのユーザーから理解を得ていった(表1)。
創業より43年を経過し,サバイバルフーズの長期保存性に関する検証は済んだ。現在は国内での製造委託先と新規製品の開発や品質向上の研究を続けている。また,この40年の間に,非常食や備蓄食は備品ではなく食品である,との社会認識が醸成されたことは喜ばしいことである。この変化は,例えば東日本大震災以降に,非常食にも美味しさを求める意識の高まりなどに表れている。
サバイバルフーズの販売に当たり,当社では食糧危機(食料安全保障)を念頭においていた。そのために非常食ではなく備蓄食が必要であると考え,製品に求められるのは数年の保存ではなく,数十年の保存であると考えていた。そこで当社では,10年を超えて保存が可能な食品を備蓄食と定義し,また非常食(備蓄食)は食品である以上美味しくなければいけないと考えた。美味しいとは,普段食べる食事と遜色がない味のことである(写真1)。
次に,サバイバルフーズの保存性について示す。


表1 サバイバルフーズ 分析試験比較表
写真1 一人90食の備蓄を! 創業当時のポスター写真 / 写真2 サバイバルⓇフーズ(クラッカー・チキンシチュー・
野菜シチュー・とり雑炊・えび雑炊)製品と中身

2.保存技術

サバイバルフーズは缶入りのフリーズドライ食品である(写真2)。
サバイバルフーズの保存技術を一言で説明すると,静菌である。サバイバルフーズの保存に関して考慮すべき要素は大きく分けて二つあり,一つは腐敗であり,もう一つは酸化である。腐敗の原因は食品内の微生物が増殖することである。微生物制御の手段はいくつかあり,pH の調節,塩蔵,乾燥など,いずれもAw(水分活性)のコントロールによるものである。このうち,サバイバルフーズではフリーズドライ加工により食品中の水分を極限まで除去することによりAw を一定以下にコントロールしている。Aw は0.6以下であれば,ほとんどの微生物が増殖を止める。したがって腐敗の原因はなくなる。これは,殺菌(滅菌)とは違い微生物が食品中に存在していても活動を停止している静菌状態である。
次に,酸化の原因は空気中の酸素による食品の化学的変化である。フリーズドライ加工を施した食品は多孔質となるため,表面積が増え,酸化に非常に弱い特徴がある。従って酸素に触れないように真空包装または不活性ガスで覆う必要がある。かつては缶内の酸素を不活性ガスの窒素に置換(窒素置換)していた。この方法では,内容物を充填した缶を仮巻き締めした後にチャンバー庫内に納めて密閉し,脱気,窒素ガスを充満させて酸素を缶から除去,その後にもう一度本巻き締めを行う。しかしながら,仮巻き締め状態のコントロールが難しいため各缶内の残存酸素量が不均一となる可能性が残る。そこで,現在では脱酸素剤を利用するのだが,今度は脱酸素剤の長期保存性についても配慮が必要となる。脱酸素剤については国内での提供開始からすでに40年以上が経過しており,充分な時間的実績を積んでいる。



3.外装容器

外装容器にはスチール缶を採用している。その理由は,長期保存性を保つために外気との遮断が重要となるため,酸素透過性のない容器が必要であること。災害時の使用シーンを考えたときに,過酷な環境で容器に衝撃(ぶつける・落とす)がかかる可能性があり,その際でも容器は破損することなく,変形することで密閉性が保たれること。さらに,缶は19世紀に発明され,容器包装としての歴史と実績があり,再資源化のシステム(リサイクル率90%以上)も整っていることである。
また,イージーオープン缶の方が良いとの意見もいただくのだが,あえてイージーオープン缶は避けている。開けやすいのは,一方で開きやすいと考えられ,長期の保管を考えるときに外気の遮断の点で不安が残る。こうして現在のスチール缶二重巻締めを容器包装として採用しているが,問題は付属している缶切りにある。サバイバルフーズに付属する折りたたみ式平型の缶切りは,金属加工工場が8工程ものプレス技術を用いて製造している。零細工場であるため,その製造技術が失われる可能性がある。また,缶切りを使用したことがない若い世代が増えている社会環境も問題である。缶切りの需要がなくなれば,缶詰が発明された当時のようにノミと金槌で開缶しなければいけなくなるかもしれない。


図1 大地震の発生に備えた対策として「食糧や飲料水を準備している」人の割合

4.食料備蓄とローリングストック

サバイバルフーズは備蓄食として販売され,私たちは食料の備蓄を安全保障の問題と考えている。日本の食糧自給率は,過去50年間減少し続けており,直近のカロリーベースでは40%を切っている※1)。この状態で食料の輸入ができなくなるような不測の事態が生じた場合,私たちは生き残れないということになる。このような事態に備えて,公助(行政)・共助(民間)・自助(個人)のそれぞれが食料の備蓄を進めているが,このうち自助で行う食料備蓄を家庭内備蓄という。では,家庭内備蓄はどのくらい進んでいるのだろうか※2)。図1の通り,1980年代から増加傾向にあるようだが,現在でも半分以下(46.70%:2017年)である。
さらに問題なのは各家庭の備蓄量である。静岡県が実施している南海トラフ地震(東海地震)についての県民意識調査※3)によれば,「今,災害が発生したと仮定して,あなたのお宅では,利用できる食料は家族の何日分ありますか」という質問に対して,1週間以上の食料備蓄をしている人は,防災意識の高い静岡県でさえ19.6%とわずかであった。
ローリングストック法は,家庭内備蓄の切り札とされるが,その内容は買い置きのことである。買い置きが備蓄ならば,無理なくできそうだが,考慮すべき点がある。それは備蓄量である。買い置きとは,日常の食料を少し多めに購入することであり,日持ちのしない日常食品では充分な量が蓄えられない。買い替えが頻繁となるからである。先の内閣府の調査で「食料や水を準備している(備蓄している)」と答えた人の中には,買い置きで準備している人も多いのではないかと推察する。すると,家庭内備蓄は思ったほど進んでいないと考えざるを得ない。
充分な備蓄量を確保するために,家庭内備蓄はローリングストックだけでなく,非常食(備蓄食・防災食)とあわせてバランス良く備えるのが良いと考える。



5.物流と備蓄

新型コロナウイルスの感染流行で一時期マスクが不足する事態があった。店頭から物資がなくなることは度々経験されており,10年前の東日本大震災の際にも,水や食料が店頭からなくなった。なぜこのような事態が起こったのかを考えると,備蓄とは反対の思考である無駄の排除が原因にあると考える。
便利の追求と無駄の排除による合理化によって,現在の高度な物流システムは成り立っている。日常生活では効率が重視され,冷蔵庫内や店舗のバックヤードに在庫のためのスペースを確保することは無駄と考えられ,極力減らされる傾向にある。日常時は生活スペースを充分に確保して,必要なものは必要なときに近所のお店やネットショップで取り寄せれば良いというのは合理的である。一方で,食料備蓄もローリングストックも,余分を作ることであるため不合理ということになる。
幸いエッセンシャルワーカーのおかげで日常生活が送れているものの,今回のパンデミックのように,どのくらい継続するかが分からない突発的な災害に対して備えるためには,蓄え(たくわえ)が必要である。蓄えは余剰であり,余裕を生む。



おわりに

私たちは,食料備蓄が少ない現状を憂えなければいけない。食料の生産量や物流システムに不足や障害があるとき,食料の供給はストップする可能性がある。想像するのは難しいが,食べるものがなくなるかもしれないのだ。食料備蓄は,何事もない平和な日常では不合理と思われがちだが,有事を想定すれば実は合理である。



参考文献

1 )知ってる?日本の食料事情(農林水産省):https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/(参照日2021-07-26)
2 )内閣府「防災に関する意識調査(昭和62年8月),平成元年7月,平成3年7月,平成7年9月,平成9年9月,平成14年9月」「防災と情報に関する世論調査(平成17年8月,平成21年12月)」「防災に関する世論調査(平成25年12月,平成29年11月)」
3 )平成29年南海トラフ地震(東海地震)についての県民意識調査(静岡県危機管理部危機情報課)




【関連リンク】
月刊機関誌「包装技術」2021年/9月号[公益社団法人日本包装技術協会]

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