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サバイバルフーズの「缶切り」(付属品・非買品)は日本製の万能缶切りです。

25年備蓄食「サバイバル®フーズ」に付属する缶切りは、小さく軽く携帯でき、しかも頑丈で使いやすい折り畳み式で、1978年のサバイバルフーズ販売開始当初から愛用され続けてきました。
この記事では、サバイバルフーズ付属缶切りの製造を担う二社(製造メーカー:株式会社新考社の田沼伸浩社長、製造加工会社:有限会社アズ池田の池田正博社長)に「付属缶切り」についてお話を伺いました。

折りたたみ式携帯缶切り アイデアル(IDEAL)No.15

サバイバルフーズ付属の缶切り

25年保存のおいしい備蓄食「サバイバルフーズ」は、超・長期の保存性を担保するために丈夫なスチール缶容器を使用しています。そして、丈夫な缶を開けるには、必ず「缶切り」が必要となります。

サバイバルフーズには、必ず、1缶に1つずつ、サービス品(非売品)の“缶切り”が付属しています。 25年の超・長期備蓄に堪え得る付属品なのですから、使い捨ての付属サービス品といっても、その製品の品質に一切の妥協はありません。

実は、この缶切りは、サバイバルフーズを日本で販売してから40年以上にわたって使用され続けている特別な逸品なのです。

サバイバルフーズの蓋の中の缶切り
サバイバルフーズには必ず1缶ごとに缶切りが付属します

アイデアルNo.15(IDEAL No.15)缶切り

サバイバルフーズの缶切りの型番(正式名称)は「アイデアル No.15」と呼ばれています。
日本の缶切り製造のパイオニアとして知られ、業務用缶切りのトップメーカー「株式会社 新考社」が1970年代から製造している製品です。

アイデアルNo.15(IDEAL No.15)缶切り
アイデアル No.15缶切り

「アイデアル No.15」は、開発当時、朝鮮戦争やベトナム戦争でアメリカ軍の兵士らが携帯した「P-38/P-51 缶切り(P-38/P-51 can opener)」からインスパイアされたもので、より使いやすく、より丈夫で長持ちするように日本人向けに改良されたのが始まりです。最初に設計されてから現在まで半世紀にわたって、基本デザインは変わらず、今もサバイバルフーズの缶の付属缶切りとして製造されている“ロングセラー製品”です。

高い技術力を持つ日本の町工場が製造

この50年の間に、最初の設計を担った会社は廃業してしまいました。しかし「アイデアル No.15」は、初期の型よりも洗練されシャープな缶切りとして再設計されました。そして今も当時と変わらぬ基本デザインのまま供給され続けています。

そこには、製造を引き継いだ金属プレス加工工場「有限会社 アズ池田」の豊富な経験と高い技術力、多彩なノウハウが必要不可欠でした。金型製造の品質は、職人の経験と能力に大きく左右されるからです。

最初の会社の廃業で「アイデアル No.15」の図面はいちど失われましたが、アズ池田の池田社長は、残った缶切りの現物を基に、自らの手で新たな設計図を起こし、金型や部品を一から製作していきました。

金属加工の業界では、金型の設計と金属プレス加工をそれぞれ別々の会社で行う“分業化”が進み、現在では、設計から製造までをワンストップで行う工場は全国でも珍しいといいます。
その様ななかでアズ池田は、製品の企画から金型の設計、金型の製作、金属プレス加工、部品の組み立て、カシメ加工等々、製品の企画・設計から量産体制に移行するまでを一貫して行うことができる稀有な町工場として知られています。長年の経験と実績に裏打ちされた確かなノウハウと高い技術力を合わせ持ったアズ池田は、優秀な製品を製造する町工場として“葛飾ブランド”に認定されています。

※ 葛飾ブランド(葛飾区・東京商工会議所)
https://katsushika-brand.jp/2018-12/#3003



そして、これらを可能にするのは技術者としての池田社長の存在が欠かせません。
池田社長に“アイデア”さえ持ち込めば、設計図から量産まで形にすることができるのです。あらゆるニーズに対応できる柔軟な対応力、長年の経験から培った高い技術力、池田社長の徹底的な物作りへのこだわり(職人魂)により、幅広い業務にきめ細かく対応することがはじめて可能となります。

初めから終わりまでのアルファベット「 A to Z 」のアズ(AZ)が社名の由来です。
ただ注文を受けて製品を製造するだけではなく、お客様の要望を聞き、企画・設計の段階からアフターケアまでの―最初(A)から最後(Z)まで―全ての工程に責任を持って製造するという想いが社名に込められています。依頼者にとって、たいへん頼もしいプレス工場です。

池田社長が金型設計(CAD)している様子
池田社長と金型設計(CAD)

缶切りの製造工程

「アイデアル No.15」の製造工程は、原料鋼材の選定から始まります。

① 部品の製造と加工

それぞれ硬度の異なる鋼材を使い分けて、池田社長が自ら設計した特殊で複雑な10工程の金型によるプレス加工を経て「本体(ボディ)」と、また別の金型を使って「切り刃」の二つの部品が成型されます。

缶切りの部品
「本体」と「切り刃」の部品

複数の加圧プレス機を使い分けて、数ミクロンの誤差という精密さで、平らだった鋼が、次第に複雑な形状へと変化していきます。

プレス工程の様子
プレス工程

そして、二つの部品は、「カシメ(加締め)」工程により、熟練の職人の微妙な力加減で、一つ一つ丁寧に組み合わされていきます。

カシメ工程の様子
カシメ工程

しかし、本体に切り刃を組み上げた段階では、まだ完成ではありません。

② 焼き入れ

カシメ工程の様子
焼き入れ:製品を連続炉に挿入

この後、新考社の“こだわり”により、繰り返し使っても刃がよく切れ、将来に渡って不自由なく使える缶切りにするための加工が施されます。

缶切りの刃やボディの鋼材をより頑丈にするための熱処理「焼き入れ」と「メッキ加工」の工程を経ることで、缶切りの鋼の表面硬度は、ビッカース硬度(VH)で約6倍も強くなります。加工前に2回程度しか使えなかった缶切り(使い捨て)が、加工後は50倍(100回以上)でも繰り返し使用に堪えるよう丈夫になるのです。

本来、一度だけの“使い切り”であれば、ここまで丈夫に作る必要はありません。しかし、缶切りのパイオニアメーカー新考社の田沼社長は、自社の缶切り製品を単なる道具ではなく、お客様の生活に欠かせない繰り返し使える生活道具として位置付けます。妥協を許さず、わざわざ手間をかけてでも、常に最高水準の製品の品質を追求しているのです。

缶切りの鋼は、炉(無酸化連続焼入炉)に入れられ「焼き入れ」処理された後に、再度焼き入れ時よりも低い温度で「焼き戻し」処理を施し、鋼の粘り(靭性)を高めていきます。その後は「バレル研磨」「メッキ工程」を経ることで、劣化、サビ、摩耗に強く、光沢のある美しい製品へと仕上がっていきます。

メッキ加工の様子
メッキ加工

③ 完成

こうして完成した僅か12グラムの“小さな缶切り”には、たくさんの工夫とアイデアが凝縮されています。

缶切り完成品
アイデアル No.15缶切り完成品

無駄なく力を伝える工夫から「切り刃の位置」を、アメリカ軍P38/P51缶切りの仕様とは逆の上下反対向きの位置に大きく変更することで滑らかな使い心地が実現しました。また、本体に複雑な立体加工を施こすことでボディの強度をより高めて、同時に「栓抜き機能」を本体に追加しました。さらに、高い切れ味を実現するため、切り刃の角度を0.35mmだけ内側に傾ける調整も行なわれました。 そうして最後に“アイデアル(IDEAL)”ブランドの刻印を刻み込みます。

この“アイデアル”は、昭和の往年のコメディアン・植木等(クレージーキャッツ)さんの有名な傘のテレビコマーシャル「なんである
アイデアル」のフレーズに使用されました。実はこのCMは、新考社の商号「アイデアル」を当時の傘会社が借りて作られた広告なのだそうです。
こうして、50年にわたるロングセラー缶切り「アイデアル No.15」が完成しました。



最後に

新考社の田沼社長とアズ池田の池田社長
左:株式会社新考社の田沼伸浩社長
右: 有限会社アズ池田の池田正博社長

サバイバルフーズの付属缶切りは、「新考社」の企画開発力と「アズ池田」の技術力が合わさることにより生まれました。

約半世紀に渡ってサバイバルフーズの付属品に採用される“折りたたみ式の携帯缶切り「アイデアルNo.15」”は、付属品の域を超え、日本の職人の手により一本ずつ丁寧に作られた、いわば、格好良くて美しい“工芸品”と言えます。

サバイバルフーズの缶を開缶した後は、残った「缶切り」を捨てずに是非手元に取り置いてみませんか?
鞄に入れたり、携帯し持ち歩いたりすれば、きっと日常生活から災害時まで役立つ“便利ギア”となることでしょう。


※缶切りの使い方について解説動画

≪取材協力≫
株式会社 新考社 田沼伸浩社長
http://www.ideal-shinkousha.co.jp/

有限会社 アズ池田 池田正博社長
https://www.az-ikeda.co.jp/

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